2007.06.22

現在、この夏、2007年参議院選挙を目前に控え年金問題で大騒ぎしている。社会保険庁のズサンな年金管理問題である。5000万件を超える不明な年金記録問題。コンピュータに未入力の1430万件あるとされる厚生年金記録。3年前と同じ状況である。ただ3年前はこの事実が隠蔽され、この問題をマスコミも国民も知らず、知らされていなかっただけである。3年前は参議院選挙を目前にして、国会議員の年金未払い問題が噴出した。それまで、2004年春までは国民が知らなかった事実であった。今年2007年6月には年金、老人福祉と関係の深い老人介護問題ではコムスン(グッドウィル・グループ)の老人福祉を食い物にする企業行動が明らかとなりマスコミを賑わした。しかもこの3年間、北朝鮮拉致被害者問題、核問題は一向に前進しなかったのである。大方の人は既に、3年前のこの年金問題、その他懸案問題を忘れているのではと危惧するので、ここにその当時の記録を再現する。(多くの国民が既に3年前の事実を忘れていても一概に彼らばかりの責任とは言えない。日本のマスメディアは良心的な取材者、記者にとって余りに忙しく、3年前の事実は時に一顧だにされないからである。)


“政治家の年金未納問題はテレビコマーシャルに登場したある女優の年金未納問題で幕が開き、自民党現職閣僚の年金未払いの発覚、福田官房長官の未払い発覚と辞任、年金未払いを糾弾して来た民主党管代表の国民年金未払いの発覚と代表辞任、社民党の看板である土井氏の未払い、公明党執行部3役の未払い、更には小泉首相、民主党の小沢氏の未払い問題。国民が気づいて見ると共産党を除く、すべての政党幹部が何等かの形で国民年金未納者であった。”

上記は私が3年前にSIA評論として2004年5月20日に「040520SIA評論:日本の政治とイラク人質、政治家の年金未払い、北朝鮮拉致被害者問題」と題して書いた評論の一部である。既にお気づきの様に3年前と同じ状況が切り返されている。さて、今回は次々に明るみに出ている、社会保険庁のズサンな年金管理問題である。なぜか参議院選挙の前になるとこういった行政機関や政治家の問題が明るみに出る。日本の現在の政治、社会のありようを端的に示している問題である。さしずめ、今回の参議院選挙での争点、問題点はこの年金問題であろう。北朝鮮の日本人拉致と核問題、イラク問題や憲法改正問題、教育問題も争点として上がって来そうではあるが?

既にお気づきのように本質的に3年前と余り変わっていない。しかも年金問題に留まらず、北朝鮮問題もこの3年間前進はない。敢えて言えば既に北朝鮮が核実験を公然と行い、核保有国としてしたたかな交渉を行っていることでる。3年前の参議院選挙で私は一国民、候補者として「本当の年金問題は年金の運用と管理の問題」であるとあらゆる機会に指摘した。更に「北朝鮮拉致被害者の過酷な状況、北朝鮮の核問題」について述べ、「日本という社会が国民の生命、生活の安全を守るという国家としての最低限度の任務を疎かにして来た事」を批判した。残念ながらこの3年間改善は見られず、その際指摘した諸問題より鮮明に国民の眼前に示されて来ただけである。ある種の無力感をこの問題に真剣に取り組んだ全ての人は感じていると私は思う。この問題を今一度冷静に考え、日本として如何なる対応取るべきかを考えて戴く為に、判断材料として2004年5月20日のSIA評論の記事を引用し、再現したい。


「040520SIA評論:日本の政治とイラク人質、政治家の年金未払い、北朝鮮拉致被害者問題」の引用
“この2ヶ月間、21世紀の日本の政治を考えさせる事件が立て続けに起きた。イラクでの日本人拘束問題。国会議員の年金未払い問題、明後日5月22日に小泉首相が自ら再訪問する北朝鮮、北朝鮮の日本人拉致問題である。この3つの事件・問題は一見するとそれぞれ独立した、個別の問題である。しかし政治的に見る時この3つには共通する現代社会、日本社会の問題点が隠されている。

重要な問題が幾つかあるがその一つを取り上げると「マスメディアを通じた政治のワイドショウ、ビジネスショウ化」である。国際政治、外交における国家間、集団間の利害対立を有利に進めるため、各勢力は冷酷な打算でマスメディアを利用している。国内政治においても大衆に如何に評価されるかを計算しつくした政治的演出がなされている。この現象自体はある意味当然の事であるが、この事に国民が気づかず日本の政治を歪め、結果として衆愚政治に陥るとしたら警鐘を鳴らす必要がある。国民の安全、国益、年金制度に対する正しい理解とはかけ離れた議論が横行する危険があるからである。

****中略****本来国政のプロである各政党幹部が年金未払い問題に気づかず、あるいは隠蔽しつつ国会で論戦を重ねていたとすれば、これは単なる自己責任論では済まない。政治家の選挙公約、弁舌と実際の政治家の見識、本音、行動様式のギャップには実に信じ難いものがあるといわざるを得ない。

これ迄の日本の各政党の選挙公約、主張は何であったのかと思わずため息が出る。年金問題も社会福祉問題も所詮は、国民の不安を煽り、その不安心理を食い物にして得票を貪る単なる選挙戦術に過ぎなかった様である。大衆の人気を煽るマッチポンプである。衆愚政治の典型を見る思いである。

政界が衆愚政治の表舞台であるとすれば、その幕間講演を演じてきたのがマスメディアである。筑紫哲也氏を初めとする、日頃国民大衆を睥睨するが如きニュース報道姿勢、ニュース報道という名の下に滔々と自らの「見識」を国民の意見を代弁すると称して語り、誇ってきたニュース番組の司会者達も未払であった。マスメディアを通じた政治のワイドショウ化、ショウビジネス化の当然の帰結は政治家、マスメディアを含めた「変わり身の早さ」、「分析力の欠如」、「政治日程を睨んだ打算」である。

****中略****ここに、一抹の不安がある。外交とは所詮お互いの妥協の産物である。参議院選挙告示日を目前にした小泉首相に取ってこれ程の政治的表舞台はない。全体主義、軍国主義国家にとって、交渉相手国の政治日程は時として最高の交渉カードである。自国民を恐怖政治の下に押さえ込み独裁を布いている金正日総書記、北朝鮮にとって日米両国の世論、政治日程を考慮しつつ最善の妥協時期、妥協策を求めているのが現状であろう。ソビエトの極東ハバロフスクで1942年2月16日に生まれたといわれる金正日氏も、様々な出自にまつわる伝説に彩られてはいるが既に62歳。***中略***イラク問題に揺れる米国、参議院選挙を目前に控えた日本と秘密交渉を行うにはこれ以上ないタイミングである。

私は世論とマスメディアを通じた政治のショウビジネス化が進展しており、結果として国益を犠牲にするのではないかと危惧している。今日本に必要なのは、テロ国家、テロ集団、不法集団に対して「国民の命を守る強さとしたたかさを持った国家」であり、美辞麗句を並べる政治家ではなく「次世代の日本人に責任を持つ政治家」であると信じるからである。

その意味で痛切な思いに駆られるのが北朝鮮拉致被害者、横田めぐみ(13歳で拉致された)さんの家族の日本政府への要望書である。「横田めぐみさんの娘、キム・ヘギョンさん(16歳)の訪日拒否要望書」である。昨夜5月19日、私もテレビニュースを通じて横田拓也(めぐみさんの弟)さんが代弁する家族の意向、「仮に首脳会談でヘギョンさんの訪日が北朝鮮から打診されても日本政府は拒否して欲しい」を伺った。そこには、自らの家族を取り戻すために、孤独な戦いを強いられた家族の願いがあった。日本国内で国民が拉致されても法的手段を講じることなく、救済できないような国家は国家の体をなしていないと私は思う。今回のこの横田家の意向、声明が、喜びに湧く一部拉致被害者家族のみならず、多くの未確認拉致被害者の救済に繋がる事を願う者である。“(以上、「040520SIA評論」の引用)

さてこの3年間を振り返り見て思うのは、年金問題は新たな醜聞が明らかとなり、北朝鮮の日本人拉致被害者問題は未だに解決せず、核問題は一層深刻化して来た事である。北朝鮮問題と言えば幕間狂言のような新たな事態が発生した。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の中央本部(〒102-8138 東京都千代田区富士見2-14-15)の土地建物35億円売却契約に絡み2007年6月13日に弁護士、元公安調査庁長官緒方重威氏の自宅と事務所が東京地検特捜部の家宅捜索を受け、6月14日に朝鮮総連代理人の元日本弁護士連合会会長の土屋公献氏も自宅、及び事務所を電磁的公正証書原本不実記録の疑いで家宅捜索を受けた。(在日朝鮮人系16金融機関に対する約1兆3千億円の公的資金投入を廻る裁判で6月18日に朝鮮総連に対して627億円の返済命令判決が東京地裁で下されると予想される直前の所有権移転工作であり、しかも平成18年の公示価格で土地代だけで39億円の物件である。)

さてこの3年間、各党の政治家は2007年7月の選挙に向け選挙準備に奔走し、支援者に向かって多くの約束を繰り返して来た事は間違いない。しかし、年金問題の本質は正しい運用、管理を実施して来たならば現在の多くの問題は存在しなかった事実を語る人は少ない。北朝鮮拉致被害者家族の本当の苦痛は、北朝鮮の拉致行為にだけに因るのではなく、これまでの20年、30年に及び日本社会、国家、マスメディアの不誠実な対応によって倍化されて来た事実を語る人は少な。選挙を目前に控え、再び幕間狂言に奔走するかいなかが、今日本は問われていると思う。(佐々木 賢治)



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