2014.07.26

SIAの佐々木です。昨日7月23日-8月6日迄の二週間が大暑。暦通り暑さ来訪。SIAの8月末迄の各国語翻訳・通訳対応は例年担当者の一時帰国や海外訪問のため一部遅れが発生する事がありますので、早めに連絡下さい。

例年開催している大暑中の「懇親会兼放談会」を7月26日開催します。お時間のある方は是非参加下さい。末尾に7月23日SIA評論「百年前と百年後 第八回」を公開送付します。

7月26日午後6- 暑気払い懇親会兼放談会
会場:佐々木インターナショナルアカデミー
参加費 3千円(SIA生徒は学割適用で2千円)
要予約:料理、飲み物の準備の都合上要予約


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140723-SIA評論:百年前と百年後:第八回 中華人民共和国の未来展望その二 2014年7月23日

日本の新聞の国際欄、テレビの国際ニュースで中国問題が語られない事は無い。その中国を語る時、多くの日本人の意識下に必ずといって良いほどあるのは俗に言う中国4千年の歴史である。しかし、厳密には中国4千年の歴史は存在しない。そこで、議論を厳密に行い問題点を解り易くするため言葉を再確認する。

誤解を生む中国4千年の歴史
実は中国という国は歴史上存在しない。清(1644-1916年)滅亡以降の中華民国、中華人民共和国の略称として中国と呼称するのであれば、実質的に国連を追放された後も未だに中華民国を自称する台湾と国連常任理事国として正式国名を中華人民共和国と称する政府の関係を実に曖昧な物とし、又危険な物としかねないので、本文中では中国という呼称はできるだけ避ける事にする。

通常、中国とは中国大陸と呼称されるアジア大陸の東部に広がる一帯を指している。その一帯はまさに各民族、王朝興亡の歴史の舞台となった地域である。日本の歴史書、文書でもその地域は、各々の王朝、政権者が自称した名称(あるいは周りから呼ばれていた名称)で記録している。その名称、時代と共に支配領域も民族も異なる。そこに継続的名称も無ければ、一貫した歴史年表、歴史観も存在しない。このため、宋(960年 - 1279年)以来のこの千年は元(1271-1368年)、明(1368 - 1644年)、清(1644 -1912年)と呼ばれ中華民国、中華人民共和国が続いている。遣隋使、遣唐使で有名な隋(581年 - 618年)、唐(618年 - 690年,705年 - 907年)はその前の時代である。

お断りして置くと、私が特に中国歴史に造詣が深いわけではない。しかし、冷静に事態を見ると現在の多くの日本人の持つ中国という言葉に対する認識は「本当は実に根拠の無い、時には政治的用語であり、既に特定の思想、正当化に基いた言葉」に由来する事が明白となるので付言しているに過ぎない。現在よく利用される中国という呼称の曖昧さは上記歴代王朝の歴史的呼称からも明らかであり、理解戴けると思う。この呼称問題は日中間の歴史認識を巡る論争にも拡大解釈されかねないので、上記歴代王朝の呼称は日本側が意図的に作成した物ではない事も言及して置く必要がある。日本側の理解する各王朝の呼称と支配領域は、歴史上漢文書籍を通じ古典、歴史を学び、時代時代の現地の典籍表現を文字通り借用し日本語化した現地の各王朝が実効支配する領域と一致する。中華人民共和国が主張する歴史上統一定義された中国と言う呼称や領域は存在しない。支配領域は王朝毎に、又時代と共に異なり歴史的に見れば非常に一時的、限定的なものに過ぎない。これが、「中国には王朝は存在したが国は存在しなかった」と言われる所以でもある。

必然的な民族問題と領土問題
その曖昧さと世界の歴史的無知を利用し、中華人民共和国は歴史上関わりのあった歴代民族王朝の出身領域を自国領土と主張している。歴史上の数々の民族王朝によって支配された領域はその民族王朝の軍事支配力に応じて変遷して来たにも関わらず、全て包括する形で主張がなされている。彼等の主張は「中国とは時々の軍事王朝の支配したあらゆる領域を含む」ことになる。軍事力により成立した中華人民共和国は「中国固有の領土」との主張自体が自らの存立基盤である事を熟知している。その典型がチベット軍事侵攻である。これが中華人民共和国の民族問題の背景にあり、又日本を含め最近頻発している周辺諸国との領土問題を巡る紛争の背景となる原因である。このため中国とは「あるアジア大陸の東部に広がる地域」に過ぎず、歴史上厳密にはその確定的領域は存在しない事を再認識する必要がある。

中華人民共和国の民族問題、周辺諸国との国境問題についてはこれまでとし、内政問題に触れる。先月、「歴史上の国家興亡史に学ぶ中華人民共和国評価の三視点」と題し三つの側面、「一 経済と住民福祉」、「二 政治制度と時代の変遷」、「三 理念と現実」を列挙し、将来の問題点を浮き彫りとした。以下引用。

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一 中華人民共和国は近年高度経済成長を達成し、世界第二の経済大国として喧伝されているが、広く住民の福祉に役立っているか?

二 中華人民共和国の一党独裁、共産党支配は政治制度として時代の変遷に耐えられるか? 一党独裁、共産党支配を象徴するのが、人民解放軍である。人民解放軍は国家の軍ではなく、共産党の私軍に過ぎない。その軍が人民解放軍と自称するのも皮肉であり、本来の漢字文化圏の文化にはそぐわない矛盾を含んでいる。

三 最大の問題点は中華人民共和国の理念と現実にある。毛沢東の存在である。現在の中華人民共和国政府は「毛沢東の大躍進政策と文化大革命の失敗」への反省に基いて政策が遂行されている。しかし、天安門広場には毛沢東の肖像画が掲げられ、毛沢東の存在そのものが一党独裁、共産党支配、人民解放軍の正統性、正当化の基礎となっている。このため中国共産党、人民解放軍、中華人民共和国政府はこの矛盾を永久に克服できない構造となっている。いつその矛盾が爆発するか?(140624-SIA評論)
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中華人民共和国の未来展望その二
中華人民共和国の体制問題を考える時、重要なのは上記一とも関係する「権力継承、民意尊重」の問題である。民意尊重と国家権力の継承を求める結果生れたのが、人類の知恵、民主主義である。

中華人民共和国のアキレス腱、権力継承・民意尊重問題
国民の意志、声が仮に間違っているとしてもその意思を反映する政治(国家権力の施行)を多数の国民が支持する政党に行なわせる。これが民主主義である。それだけに民主主義の理念は、その制度的問題についても熟知している。一党独裁を禁じ、議員、首相、大統領の任期を制限し、三権分立制度を確立させている。国民の投票権、複数政党制と定期的国会開催、議員、首相、大統領の任期制は民主主義を保証する必要不可欠な枠組みであるが、必要条件に過ぎない。この必要条件が保証されていない所に問題があるのは勿論であるが、その問題を社会的に顕在化させないために様々な法的規制が中華人民共和国では行なわれている。言論弾圧である。

言論の自由が無く、言論の自由に基くマスメディアの監視機能が社会的に存在しない事が致命的な欠陥である。この結果、国内権力闘争は彼等が常套句として標榜する中国4千年の歴史そのまま、未だ戦国時代にある。ありとあらゆる手段を使い権力争いに勝ち抜き、一旦国家権力を手中に収めるや対立相手をその国家権力を使って殲滅する。実に血生臭い、非生産的な戦いである。

この構造的権力継承問題を?小平は、毛沢東と中国共産党の歴史に学び、自らは表舞台に立たず江沢民を国家主席に指名し、更に胡錦濤への路線を敷きこの20年権力闘争を未然に防いだ。?小平の偉大さは経済政策にあるのではなく、共産党独裁体制を維持し続けたその布石にある。失脚を繰り返した?小平は彼の政権獲得時(1980,1981年)に重用した総書記の胡耀邦、国務院総理の趙紫陽の二人を後に民主化問題を巡り失脚させている。

胡錦濤の人柄もあり、胡錦濤引退までは紆余曲折を経つつも?小平の描いた規定路線通り進んだ。しかし次世代の習近平、李克強以降の権力継承が平和裡に進むという保障は何処にも無い。経済的に豊かになった国民は海外経験も豊富で、米国に代表される民主主義、言論の自由を見聞している。特に太子党と言われる、共産党幹部の子弟には米国生活に憧れる者が多く、共産党幹部とその子弟が一番現在の中華人民共和国の制度的問題点を自覚している。

今尚中国の大地を彷徨する毛沢東、?小平
中華人民共和国成立後数千万の命を奪ったと言われる中国共産党、特に毛沢東の歴史的過ちは公然の秘密であり、その歴史的過ちを歴史上不可避のものとして正当化するためにも反日歴史教育は必要不可欠として準備したのが?小平であり、その忠実な実践者が江沢民であったとすると、中華人民共和国の未来と今後の日中関係について考える時、毛沢東、?小平は死後、今尚中国の大地を彷徨している事を理解する必要がある。(140723-SIA佐々木賢治)
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