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世間の常識、非常識「人としての常識」 改めて思う現代社会、その50年後、50年前

SIA代表:佐々木賢治

SIA代表:佐々木賢治


一昨日11月7日朝4時半起床、未だ暗い中自転車で最寄り駅まで8キロ走り、JR東海の電車を乗継名古屋駅6時28分発「のぞみ」で東京に向かい、横浜市内の自宅で病気療養中の叔父を見舞い、11時に品川駅着。11-20時過ぎまで品川で所要を済ませ、24時前に帰宅した。

こういった日程が可能になったのも、新幹線のぞみの御蔭である。名古屋-東京間1時間40分弱、更に新横浜、品川での乗降も可能なためであり、車中では往復共に日頃読む時間のなかなか取れなかった本を読む事に集中もできる。

この日は20代後半-80前後の方々にお会いしたが、その最大年齢差は約50年。50年後の日本社会を私はこの眼で見る事は叶わないと思うが、お会いした若い方々が目撃する50年後2070年の世界はどうなっているか? ふと、我に返り1970年当時を思い出した。

この間もSIA事務所に届く、皆さんからのメールは日中留守を預かる者が確認し、緊急を要する物は携帯に転送されるので見る事が出来る。その日私が読んでいた本は第13期甲飛予科練生を中心とする訓練や時代背景の記録である。昭和18年に志願し予科練に入隊した第13期甲飛予科練生は2万8千人と云われる。75年前の話である。当日の若い人達との出会いもあり、思わず時代の変化を考えさせられた次第である。


賢者は歴史に学び、愚者は自らの失敗に学ぶ

2年前の米国大統領選挙、日米メディア関係者には失礼であるが、実に面白い良き教材であった。実は2015-2016年当時、私はこの選挙を他山の石と述べ続けていた。米国大統領選挙予備選の始まる前、2015年3月頃からSIAでは情報調査分析の一環として米国大統領選挙を追った。当時日本のメディアが報道を怠って来たクリントン氏の個人メール使用問題についての米国報道。この点について、2015年9月4日付SIA評論で次の様に指摘した。

“クリントン元国務長官の民主党予備選挙情勢が、極めて厳しい物となりつつある。その原因は元国務長官時代の個人メールアドレス使用にある。この問題が、米国メディアで浮上したのが2015年3月。当時この問題が大統領選の重要問題となると取り上げた日本のテレビ、新聞メディアは我々の知る限りなかった。このため皆さんにSIA公開メールで、「日本のメディアは未だ取上げていないが、この問題はクリントン元国務長官にとってやがて深刻な問題となる」と警告した。その通りの状況が生れて来た。”

3年前の日本メディアの報道姿勢を是非、確認戴きたい。「賢者は歴史に学ぶ」、あるいは「賢者は他人の失敗に学ぶ」と云い、「愚者は自らの失敗に学ぶ」と言われているが他山の石、他人の失敗に学ぶ事はなかなかできないものである。自分の失敗に学ぶ事も実は難しい。その最たるものが日本のメディアと評論家であるとすると喜劇であり、悲劇である。米国メディアは破れ、他山の石として日本メディアは学ぶ事無く、理に合わない説明に明け暮れている。その事例を示す。世論調査である。他山の石、歴史に学ぶために二年前の記録をひも解くのにお付き合い願いたい。この記事の土台は実は2016年11月23日に書いた物であり、それを再現する理由は、目的は2018年11月6日の米国中間選挙予測にある。

他山の石:米国トランプ大統領誕生と世論調査が外れた真因

テレビや他紙も似たり寄ったりであったが、朝日新聞は2016年11月16日朝刊紙面で15頁目6段全部を使い「予測、なぜ外れた」の大見出しで解説している。しかし、いくらそれを読んでも言い訳は理解できるが真の原因にはたどり着けない。このため、世論調査が外れた言い訳を繰り返したテレビや新聞の解説を幾ら読んでも僅か2年前の歴史に学ぶ事すらできないのである。その理由を、2016年11月23日のSIA評論を引用しつつ述べる。

その記事中、世論調査対象の回答者数が何処にも書かれていなのである。2016年10月24日号SIA評論は世論調査について以下の様に報じている。そこには電話回答方式回答者数872人と明記されている。

“日本時間本日24日午前中(現地時間10月23日日曜日夕刻)のPBSニュースが最も新しい世論調査結果を報じていた。第三回討論会後、現地時間10月20-22日に行われたワシントンポスト・ABCによる世論調査、電話回答方式で行われ回答者数は872人。その支持率はクリントン氏50%、トランプ氏38%となっている。ワシントンポスト・ABCによる世論調査はこれまでもクリントン支持率が高く出る傾向にあり、これを割引いても、大勢が決したかに見える。”

ここに2016年の選挙予測の問題点の全てが隠されている。米国の州の数は50。872人が各州均等であるとすると各州17.4人。全選挙人数は538人であるが、この数は各州の上院議員と下院議員の数を足したものである。下院議員定数435人は人口比例で割り振られる。上院は各州2名。総計535人。残り3名は首都ワシントンDCに割り振られている。

このため世論調査対象の選挙区を51と見れば平均17人で867人である。因みに選挙人の多いのはカリフォルニア(選挙人数55人)、テキサス(38人)、フロリダ、ニューヨークは共に29人。この4州で151人。
イリノイ、ペンシルベニアが20人。上位6州で191人。残り45選挙区で347人。当然人口の多い州から多くの回答者を得ていたとすれば、他の大方の選挙区では回答者数は多い所でも10人+、10人未満の所も多数ある事となる。これでは世論調査として絶対的に調査対象数が不足する。これでは当たるはずがない。この事実を指摘しているメディアは私の知る限り皆無であった。この点が日本のメディアの残念な実態である。

では今まではどうだったか?今までは正確であったものが急に不正確となった理由は何か? 実は事は簡単な話である。ある特殊な条件の下では、こういった少数の調査対象数でも統計的に有効で、信頼性ある結果予測ができたのである。

その条件とは何か?

人種、性、年齢、学歴、職業といった分類群別投票行動が全国一律であればこの程度の調査数(全米で872人)でも、各州単位の総取り方式である大統領選挙においては十分有効であったのである。各州の調査対象者数は少ないけれども各州の各分類群の分類別人口比率を入力すれば各州勝利者予測は相当な精度を保つことできた。更に詳細に言えば、各世路調査機関の総平均を算出すれば、その際調査対象者数は調査機関の総和となる。これに過去の経験則に基づき修正を加えればかなりの精度が維持できる。

しかし、2016年の選挙では各地域の経済状況が余りに異なっていたために人種、性、年齢、学歴、職種と云った各分類群内の投票行動が各州で大きく異なっていた。各調査機関の予測数値の相違からも推定できた。こういった分析は日本のメディアでは私の知る限り皆無である。朝日には埼玉大学社会調査研究センター長の松本正生教授の言葉が、“「低回答率が本質的な原因ではないか」と分析”と引用されている。しかし、これは低回答率によるバイアス(回答者と非回答者の投票行動の相違の可能性)を云っているに過ぎない。

今回の選挙の最大の教訓は米国社会の本音と建て前を垣間見る事が出来た事にある。その点では何度も指摘して来たが、日本国憲法を巡るトランプ氏、バイデン米国副大統領の発言もその典型、良き事例であるが、今回は紙面の制約のため割愛する。

2018年中間選挙予測

日米メディアが伝える「TPP問題:世界の自由貿易、グローバル化と孤立主義」問題を考えると共和党には勝ち目が見えないし、米国の中間選挙を歴史的統計で観ると平均的に大統領側の党が下院で数十議席減らす。しかし、意外に強かな選挙運動をトランプ氏は続けている。共和党が下院で過半数を何とか維持すれば、歴史的勝利となる。この場合、米国選挙民は建前は唱え利用するが本音で投票したと理解すべきか、米国社会の底流に流れる構造を我々は理解する必要に迫られる事になる。共和党が上院、下院共に過半数を維持する場合、民主党が勝利する場合、それぞれの可能性に事前準備をする事が賢明な日本の対応と云えるし、何れの結果が出ようともそれに基づき次回の選挙予測に役立てる事が必要である。

2018年10月9日 佐々木賢治


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